うでん

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一人暮らし歴は20年以上と長かったが、いつも自炊をしていた。たいそうな料理をつくるわけではない。自分一人だと手間暇かけたくないし、サッと作れるものになる。長年何を作っていたかというと、その時々で変わる。覚えているものもあるし、すっかり忘れて「何を食べていたっけ」と思い出せない空白の時期もある。

 

ご飯はよく炊いていた。朝タイマーセットした炊きたてご飯を食べ、残りは昼の弁当箱に盛よくつめた。下にご飯を敷き詰めて、おかずは卵焼きをのっけたり、買ってきたコロッケにソースをかけてをどーんとのせたり。このコロッケ弁当がボリュームがあっておいしくて、けっこうはまってよく食べていた。隙間にはお惣菜のきんぴらごぼうや煮豆、佃煮や梅干しをいれた。

 

社内の人はコンビニで買ってきたり、外食したりの人が多かった。もちろん手作り弁当派もいる。昼になり弁当をレンジであたためていると「手作りしてえらいね」と社内の人に話しかけられた。「いやーそれほどでも」なんて言ったか忘れたが、朝ご飯のついでに作るのでまったく大変ではない。朝に顔を洗ったり歯磨きするのと同じ習慣だ。それとは逆に、昼は菓子パンひとつとコーヒーだけの簡単な時期があった。その話はまた後日。

 

季節はめぐり秋になり冬になり寒くなってくると、やはり温かいものが食べたくなる。夜、仕事から帰ってくると「さて何を食べようか」手間暇とお金をかけたくないので、おのずとかんたんなものになる。

 

一時期はやっていたものは、冷凍うどん+レトルトのおでんだ。うどんをレンジでチンし、丼の上にあける。おでんをあたため、うどんの上にかける。少しでもぬるいといやなので、さらにレンジで熱々にしていただく。ボリュームがあっておいしいし、なにしろ手早くできて体が温まるからよく食べていた。

 

最初に汁をすすり、おでんの具をかじり、うどんをすする。うん、おいしい。最後に食べるのはきまって玉子だ。なぜだかわからないけど最後まで大切に玉子をとっておく。なんでだろう。人によって違うだろうな。汁がしみた少し茶色の玉子にかぶりつくと、黄色い目玉がでてくる。最後に汁を飲み干せば身も心もホッとあたたまり満足。「ご飯とおでん」だとなんだか物足りないけど「うどんとおでんを一体化させた」ものならなぜか満足できる。「おでんが上にのっかっている豪華なうどん」と認識させるからか。

 

会社の同僚たちと「夜ご飯はなにを食べているのか。夜遅く帰ると大変じゃないか」という話になった。私をふくめ、みな一人暮らしの女性3人だ。当然わたしは「うどんとおでん」の話をし、このメニューをみなにすすめた。後日、同僚が私のもとにやってきてこう言った。

 

「作ってみたよ、うでん」

 

「うでん?」うどん+おでんなので、うでんと命名された。なるほど。「簡単だから夜食にいいね」という感想だった。そういえばすっかり食べていないな、うでん。