胃カメラ、異常なし

胃腸の不調からはや一ヶ月たった。食べる量も変わらず少食、消化のよいものしか食べられない。体重減少は相変わらずで横ばい。去年11月の人間ドックの胃カメラ検査は異常なし。そのときは口からの検査で、麻酔注射をして意識がないうちにおわったので辛さはなかった。今回は初めて鼻からの胃カメラ検査。この病院には「9割の人が鼻からの検査のほうが楽と言っています」と張り紙がしてあった。事前に鼻にチューブが入るかテストをしたが、スルリと入り大丈夫そうだった。しかし意識があるなかでの鼻から検査は不安で、家に帰ってからネットで調べてみたが「鼻のほうが楽」という意見のほうが多かった。なので安心して検査にのぞんだのだが、これがとてもつらすぎた。

ベッドに横になり、鼻のなかに麻酔スプレーをする。「3分間飲み込まないでください」と言われるが、どうしてもためることができず、すぐにコクッと飲み込んでしまう。その後何回かスプレーをされた。麻酔でどんどん喉が膨らんでくる感じがする。横向きになり鼻からチューブを入れる。怖くてとても緊張する。部屋は薄暗くされ、胃カメラの映像がモニター画面に映し出される。目を開けてそれを見てと言われるが、胃カメラでオエッオエッとなるし、ツバをこくっと飲み込むとむせて咳き込んでしまって涙が流れる。想像していたのとちがって苦しい。

自分の胃の中の映像を見るのは、さらに気持ち悪くなりそうでとても正視できない。目の端でとらえた映像は、赤っぽいピンク色したヌメヌメとしたグロテスクなものが写っている。まともに見たら吐きそうな気分だ。苦しくて気持ち悪くて目をぎゅっとつぶってしまう。何度も「ちゃんと映像を見て」と言われるので、目を開け映像を見てるふりをし、別なほうを見ていた。

そうやって苦しんでいる間、先生は色々と質問してきた。麻酔で声も変になって喉も膨らんでいるので声を発するにも苦しい。体に力がはいってしまっているので、リラックスするよう言われる。看護婦さんはやさしく背中をさすってくれて、こぼれる涙をふいてくれる。

鼻からの胃カメラは苦しむ人が少数のせいか、先生は「なぜこんなに辛そうになっているのか。ちゃんと呼吸もできるし、声もでるし受け答えもちゃんとできるでしょう」といった態度だった。こんなに苦しいのに受け答えなんてできない。まるで拷問みたいだった。それでも聞かれたことには、とぎれとぎれどうにか言葉を発した。時間は10分、15分程度だったろうか。やっとチューブが外され終わった。「もう二度と鼻の胃カメラはやるまい」と心に誓った。

結果は「全く異常なし」だった。映像の写真も渡された。去年の人間ドック時の逆流性食道炎はきれいになくなっていたし、以前からあったちいさなポリープは気にすることはないと言われた。さらに大きな病院でCTスキャンをするか、ストレスが原因になることもあるので心療内科を紹介することもできると提案されたけど、断った。とりあえず胃に異常がないのなら、このまま様子を見てみることにする。10分くらいベッドで休むよう言われ、診療はおわった。会計を待っている間も気持ち悪かった。喉が膨らんでいてツバを飲み込もうとすると、はげしくむせそうになる。周りの人に嫌がられそうなので必死にこらえた。はやく家に帰りたかった。

会計時に「鼻からの胃カメラはどうでしたか。辛かったですか。口からのほうがいいですか」とか聞かれた。喉も声も変だし、とても会話できる状態ではない。どうにか言葉を発するが、無言になったりで、微妙な空気になってしまった。最後に「鼻からはやりたくないです」と声を振り絞り、家に帰った。

胃カメラのおいしい飲ませ方

胃カメラのおいしい飲ませ方

  • 作者:中島恒夫
  • 発売日: 2017/12/08
  • メディア: 単行本