バター

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大きな本屋に「BUTTER・柚木麻子 著」の文庫本がたくさん積まれてあった。著者は知らなかったが、カバーイラストも気になり手にとってみた。パラパラみると面白そうだったので後日読んでみた。

首都圏連続不審死事件 - Wikipediaをモチーフにした作品だが、ノンフィクションではなくあの事件を連想させるフィクションだ。2007年から2009年の事件、そういえばその事件には覚えがあった。

 

婚活殺人事件をおかした梶井は、並並ならぬ食に対するこだわりがある。とりわけバターに関する描写がこれでもかと登場する。植物性油脂のマーガリンはバターのまがい物、と嫌悪感をあらわにする。梶井のことを記事にしたい、食のこだわりが薄い女性記者の里佳。梶井の気持ちを損ねてはいけないと焦り、まずはおすすめの「バターご飯」を食べてみることにする。

仕事を終え深夜に帰宅しご飯を炊き始める。炊き上がったほかほかご飯に「バター」をのせ、醤油を一滴二滴。ご飯のあたたかさで冷たいバターはとろりと溶けてくる。

はふはふと「バターご飯」をかきこみ、あまりの美味しさになくなってしまう。たまらずまたご飯を炊いて「バターご飯」を食べようと台所に立つ。しかし、炊き上がるまで50分ほどかかってしまうのではないか……。もちろんこれは「ほかほかの炊きたてご飯」だからこその美味しさだろう。パックされたご飯じゃ、こうはいかない。

深夜の「バターご飯」、なんと罪深い食事なのだろう。バターには執着心はない私だけど、こってり、こっくりと濃密なバターの描写にやられてしまった。「バターご飯」はそんなに虜になるものなのか。

 

こってりバターの虜になった女性記者の里佳は、166センチ、49キロのスレンダーな体だったのに太っていく。最終的には10kgも増えて肉付きがよくなっていく。恋人にも愛想を尽かされる。里佳自身はその変化は嫌悪するものではなく、まんざらでもない様子だ。もともとが痩せすぎだ。10kg増えたといっても、166センチ、59キロでしょう。

これは太っているのか?肥満度チェックしてみると、肥満度:-2.7 肥満の判定:標準体重 標準体重:60.6kg。ややマイナスの標準体重だよ。言うほど肥満ではない

  

自分の話。15年ほど前、油ものが苦手でバターの香りも好きではなかった。パン屋とかシュークリームのお店から漂うバターにようなこってりした匂いが苦手だった。

ある時シュークリームのお店を通りかがるとその匂いが漂っていた。「うわぁ」と思い、友達にこのことを話すととても驚かれた。友達は「いい匂い」と思うらしいが、私はその逆だった。早くこの匂いから逃れたい。

お店のほうもこの「いい匂い」を発し、集客につながると思っているんだろう。自分の好きな匂いだったら釣られてしまうのは確かにある。あまりに食べたい匂いだったら、鰻屋の換気扇の下でご飯を食べる、焼肉屋の下で食べる、というふうに。

時は経ち、今ではバターの匂いは大丈夫になった。パン屋の焼きたての匂いは好きだ。最近はすっかりご飯好きになり食べていないけど。

 

BUTTER

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