工場勤務と缶コーヒー

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以前の仕事は工場勤務だった。美術の学校へ通っていたが、デザインの仕事は激務という現実を知ったので気持ちが向かなかった。結局、工場は居心地がよく8年ほどもいたのだが。

 

自分の趣味の時間が欲しかったし、堅苦しい会社はいやだった。土日祝休みで残業もさほどなし、スーツを着ない会社がよかった。家の近くの職業安定所に行き、その条件で探した。今でこそハローワークということが多いが、当時は職業安定所、略して職安と言っていた。直接的でわかりやすい。言葉はなんでも今風に横文字にする傾向がある。ソフトでスマートなイメージ(やわらかい響きで格好よい印象)があるからだろう。時にわかりづらい。意図してワザとわかりづらくしている場合もある。

 

その工場は都内近隣の県で、自動車の部品の開発と製造をしていた。私が入社したのは20年以上前なので、まだ会社はあるかなと気になってネット検索したらまだあった。グーグルマップのストリートビューを見て懐かしがる。あぁ懐かしい。

 

勤務時間は8時から17時まで。現場仕事だから時間がきっちりとしている。休憩時間は午前中5分、昼休み45分、3時休憩10分。現場仕事はずっと立ちっぱなしだから足が疲れてくる。はじめのころは立ちっぱなしが体にこたえた。かたい安全靴を履いているから、足の裏に魚の目がでて痛い思いもした。何年かしてやわらかい安全靴に変わりマシになった。

 

立ちっぱなしの仕事を一人でもくもくとしていると、休憩時間がなによりの楽しみになる。午前中の5分の休憩は貴重だった。なにせ5分、なんと短いことだろう。しかし習慣とは慣れるものである。たった5分でもありがたいと思えてくる。時間になるとサッと休憩室に急ぎ椅子に座りやすむ。なにか飲んだり食べたりは自由だ。

 

いまでこそマグボトル(魔法瓶)は誰でも持参するくらい一般的だが、当時はそれほど普及していなかった。洒落たデザインはなかったし、私も持っていなかった。その点、会社にある自動販売機はいつでもサッと買えるし人気だ。休憩時間になると自動販売機にかけつける人が多い。ジュースやお茶、水などあるが、やはり現場仕事に缶コーヒーは人気だ。糖分とカフェインで疲れを癒し英気をやしなう。なにより気分転換になる。仲間同士で雑談する人、ひとりでぼおっとする人それぞれだ。

 

当時の缶コーヒーは100円だったか120円だったか忘れた。休憩時間ごと飲みたい気持ちはあるけれど贅沢すぎる。午前、昼休み、3時休憩、残業前休憩、いつ100円玉を使うかをちゃんと考えなくてはいけない。午前の5分休憩に買う人はお金持ち、羨望の眼差しをうける。まだ仕事をしてから2時間しか経っていないし、仕事は夕方や夜まで続くのだから。

 

3時休憩に買う人はかなり多く、私もそのひとりだった。 3時きっかりに持ち場をはなれ自動販売機へかけつける。缶コーヒーはジョージアエメラルドマウンテンが定番・王道で、好んで飲んでいる人は多かった。今は缶コーヒーは飲まないし飲む機会があってもブラックだが、当時は甘さ入りの缶コーヒーを飲んでいた。ワンダの赤い缶モーニングショットが好きで飲んでいる時期もあった。懐かしい。コーヒー感と苦味、控えめな甘さのバランスが好みだった。

 

現場仕事の合間に飲む缶コーヒー。夏は冷たいのを、冬は温かいのを。たかが缶コーヒーだが身も心にもしみわたった。

 

 

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