旅の朝食

旅の朝食は楽しい。たいていバイキング形式がおおく、自分の好きなものを好きなだけとって食べる。ふだんの朝食はチーズトーストとコーヒー、トマトジュースのごく軽いものだ。しかし旅という非日常におかれ、目の前にならぶおいしそうなものを見たとたん「あれもこれも食べてみたい」気持ちが浮足立ってしまい、お腹は「よし、いつでも来い。なんでも受け止めてやる」臨戦状態になってしまう。ふだんはこんなに食べないのに「朝だから大丈夫、むしろ朝はしっかり食べなきゃ」と正当化され、「せっかくのバイキングだから昼もぶんも食べてやろう」と浅ましい根性もうまれてくる。いつもそうだ。

 

しかし今のご時世、バイキングはやっているのか。今回は岩手県に一週間の旅だったが、バイキングありなしは半々くらいだった。初日の盛岡市でのホテルはバイキングなしだったので、少々がっかりしたが結果的には満足する朝食だった。

  

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和食か洋食がえらべたので洋食にした。ドリンクは自分で自由にとる方式。食べるとき以外はマスクを着用する。マスクをしてドリンクコーナーにむかう。写真は野菜ジュースと牛乳。これらは味見ていどでコップに少しだけもらう。そうしないと飲み物だけでお腹いっぱいになってしまうからだ。コーヒーは好きなのでかならず飲む。

はじめに野菜サラダが提供された。ひとつひとつの野菜がシャキシャキとみずみずしくおいしい。たかが野菜サラダなのに、こんなにおいしさのちがいがあるものかとおどろいた。

 

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ほどなく洋食セットが運ばれてきた。朝食の見本のようなメニュー。滋味深いオニオンスープ、なかはとろりのオムレツ(目玉焼き、スクランブルエッグから選べた)、じわりと脂ののったベーコン、塩加減もしょうどよいウインナー。フライドポテトとソテーされた野菜。トーストされた食パンと、ちいさなクロワッサンとパイ生地のチョコパン。はちみつ添えのプレーンヨーグルト。果物はオレンジとライチとぶどう。

ぱっと見たかんじは「これで足りるかな」といった印象だったが、ちゃんとしたホテルだけあってそれぞれがおいしく、食べ終わったころは満足し、お腹もちょうどいいボリュームだった。いつもこれくらいでやめれば太ることもないだろうな。 

 

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こちらは遠野市での朝食。パンの洋食も好きだけど、ご飯の和食も好きなのだ。おひつにはたっぷりとほかほかの炊きたてご飯がはいっている。しゃもじで飯碗によそってほかほかとほおばる。佃煮がちょこちょこと、焼き魚に納豆、卵焼き。まるいかたちの豆腐は田舎にいるときによく食べた。なつかしい。どれも分量がちょうどよくおいしく、ご飯はおかわりして食べた。

 

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おもいがけず、食後に熱々のドリップコーヒーがだされた。これはうれしい。ホットコーヒーは熱いと熱いほど好ましい。フーっとすこしすすって飲む。旅での朝のコーヒーは格別だ。おおきな食堂のなか、私たちのほかにお客は1組だけ。ゆったりとした時間が流れる。昨夜寝るときずっと長雨が降っていたけれどもうやんでいる。窓の外はおだやかな光がさしこみ、草木の緑が目にもさわやかだ。さぁ、支度して今日も出かけよう。

 

朝食の本

朝食の本

  • 作者:細川亜衣
  • 発売日: 2019/09/30
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)