夜のネオン

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旅では見慣れない風景がひろがっていて新鮮なきもちになる。田舎育ちなので自然があるとほっとするけれど、人々の営みが見えるその土地の街並みをながめるのも好きだ。きらびやかな大都市ではなく、ちょっとさびれた街がいい。地方都市へ行くと、かつては栄えたであろう商店街がズラリと軒を連ねているが、今ではすっかりさびれてしまってシャッター街になっている場所もおおい。少し車で走ると大きな商業施設があり、そこでは食料品、日用品、レストラン、映画館などなんでもそろっている。そこに行けば一度でなんでもそろってしまうから、みんなはそこに集中しまう。便利なのだがどの施設も似たり寄ったりで均一的だ。隙がなくきれいに化粧された能面のようだ。

旅にいくとその土地の生活感ただよう街をぶらりと歩く。昼もいいけれど、ネオンがひかる夜の飲み屋街も面白い。飲まないので実際に飲み屋に入ることはない。写真を撮るのが好きなので、ひたすら歩きおもしろそうな被写体を探し写真におさめ、また歩く。能面の下に隠されたものが撮りたいのだ。

 

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17時27分。盛岡駅ちかくのホテルからの眺め。おおきな影がせまってきた。まもなく昼の時間が終わろうとしている。光半分影半分。そろそろいい時間。カメラ片手に外に出る。

 

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盛岡駅。太陽が沈み、わずかに光が残る空は青くひろがっている。美しいブルーモーメントがはじまった。

 

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青は刻一刻と濃く染まってゆく。街の明かりがつきはじめた。

 

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18時36分。明かりは川にも写っている。川沿いには電球がならび明るく照らし、人々が歩いている。青はもっと濃密になり、やがて天上の漆黒の闇と混ざりあった。

 

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18時47分。明るい駅前をすぎ、裏通りのほうへと向かった。飲み屋街がズラリと並んでいる。食事する場所は閉まっていて、対照的に飲み屋は明るいネオンを照らしている。

 

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たいした都会でなくても、どんなにさびれた田舎でも決まってそうなのだが、駅前はシャッター街になっているのに、夜ともなるとおびただしい数の飲み屋のネオンが光る。昼間はひとけがないのに、夜にはたくさんの人が酒を飲みにくりだすのだろうか。しかし人がぞろぞろと飲み屋に入っていくのを見たことがない。不思議だ。雑居ビルにも上から下からギッシリと飲み屋がひしめきあっているけど、お客の取り合いにならないのだろうか。しかしネオンが光っているということは営業しているということだ。それなりの常連客がいないとやっていけないだろう。私がお酒を飲まないから、そこらへんのしくみを知らないだけなのだろうか。

 

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飲み屋の散策をおわり、明るい駅前に出た。夜ごはんにしよう。

 

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 食べたかった盛岡冷麺は絶品だった。澄んだ牛の出汁スープ、つるんとした半透明の麺、清涼感のある梨がそえてある。キムチをお好みで入れる。もういちど食べたい。チヂミも、脂ののった豚焼肉もおいしかった。ごちそうさまでした。