現実でコマンドZ

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前回は「ショートカット」の記事を書いた。

 

よく使うショートカットは「コマンド+Z」、直前のコマンドを取り消すショートカットだが、使用率はダントツに多いだろう。ひたすら「コマンド+Z」をつづけると、どんどん最初に戻っていく。

 

ちなみに「コマンド+Zしたけど、やっぱりそれをやめたい」なら「コマンド+シフト+Z」だ。ひとつ前に進む。デジタルではやり直しが簡単に効くからいい。アナログではこうはいかない。もちろんそれは一期一会のアナログの良さでもある。

 

一日中パソコン仕事をして「コマンド+Z」とやっていると、つい「現実でもコマンドZ」をやってしまいそうなときがある。「紙にペンで書いていてまちがえる」「食材を下ごしらえして、使う部分とゴミをまちがえ使う部分を生ゴミに捨てる」「まちがって床に落としてしまう」

 

 「現実でもコマンドZ」は、瞬時でぱぱっとおこる出来事の場合に多い。「あっ」と思い、思わず「コマンド+Z」が頭のなか出てくる。瞬時だから反射的にそうなるのであって、それなりに時間が経過したことに関してはこうはならない。

 

たとえば「たらふく食べてしまったことを後悔したので、食べる前に戻りたい」「このギャンブルに賭けなきゃよかった、やるまえに戻りたい」「あの日あの時、こっちの道を選んでいれば」という場合には「コマンド+Z」にはならない。純粋な後悔でおわるだろう。

 

今は会社勤めをやめているから、その症状はなくなった。会社での仕事と自宅での仕事はスピード感がまったくちがうからだ。あらゆる職業で、自然と身についた職業病はあるだろう。

 

近年、ゲームや映像の技術がどんどん進化している。バーチャル・リアリティ、略してVRを体験したことがある。ゴーグルを装着すると360度、まるで現実のようなリアルな映像が見える。海のなかにある檻のなかに入り、周りにいるサメの生態を観察するという設定だった。本当にその場にいるような臨場感が新鮮でおもしろい。しかしサメが体当たりしてきて檻がだんだんと壊れていく。それにつれて心臓の鼓動がはやくなっていった。もちろんこれは現実ではない、というのは頭の中でわかっている。わかっているのに、目の前の恐怖に耐えられそうにない。もう一撃くらいで檻は壊れそうだ。心拍数がはやい。もうだめだ。サメに食い殺される!というとき「必殺・目をつぶって恐怖をやりすごす」をやってしまった。

 

あまりにリアルすぎて、現実逃避したくて、仮想現実の世界に入り込んでしまう人もいる。あまりに入り込んでしまうと、リアルすぎて、どっちが現実なのか、現実じゃないのか混同してしまうのではないか。

 

ゲームと現実の区別がつかなくなって、現実で殺人を犯してしまう、ゲームをリセットし、また新たにはじめるために屋上から飛び降り自殺する、という話は漫画で見た。ゲームオーバー、トゥービーコンティニュー(続く)……それはゲームだからできることだ。気をつけないと。

 

 

人生やりなおしブルース

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