ビール

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前回は「ウイスキー 」の記事を書いたが、はじめてのお酒はなんだったのか記憶をたどる。

 

思い起こせば、学生時代よりももっと昔に飲んだことがあるではないか。私の父はお酒が好きで毎日晩酌をしていた。ビールや日本酒を飲んでいた。酒豪というわけでなく、ほどほどに嗜む程度だった。仕事が終わったあとの、ゆったりとした楽しみだったんだろう。

 

透明なグラスに注がれた、しゅわしゅわと泡がはじけた琥珀色のビール。炭酸のちいさなつぶつぶがグラスに点々とくっついていて、いかにもおいしそう。小学生だった私はそれを見て、まるでレモンジュースとかレモンスカッシュのようだと思った。興味津々で見ている私に「ちょこっと飲むか」と父は飲んでいるグラスをさしだした。わくわくして一口飲むと「うわー苦い!」と顔をしかめた。父は笑っている。見た目とちがってその液体は苦くておいしくない。「大人はなんでこんなの飲むんだろう」と思った。

 

お盆や正月には、おばあちゃんの家に親戚がたくさん集まる。夜にはきまって男たちの酒盛りがはじまる。ビールに焼酎、日本酒。女たちが作ったご馳走を食べ、酒を飲む。台所で女たちがご馳走作りで忙しく賑わっている。ご馳走は次から次へと運ばれる。母は「おばあちゃんの味付けが抜群にうまい」と言って感心していたのを覚えている。男たちは酒をどんどんと飲み、顔が赤くなり陽気になっていく。酒の楽しさおいしさを知らないから、みんなが酔っ払いになっていく様子を不思議な気持ちで見ていた。そんな私もビールに興味がでてくる年頃になる。

 

友達の家ではじめて飲んだビール「バドワイザー」。アメリカで横文字で格好いい。当時ロックバンドのグッズを売っているお店でよく見かけた。苦くて飲めたもんじゃないけど「飲めると大人みたいで格好いい」と思ってがまんして飲んでみた。うーん、苦い。まずい。しかし半分ほど飲むと体ふらっとして楽しくなってきた。気分も陽気になる。一缶も飲むとふらふらになってしまってもう立てなくなった。「酒ってすごいな、アルコールの力ってすごいな」と思った。このころは二日酔いのことを知らない。やはりはじめのころはアルコールに耐性がないもんだから弱い。

 

そんな私も社会人となり、どうどうとお酒が飲める年齢になる。酒のなかではビールが好きだ。かるい飲み口で気楽に飲めるからいい。とくに夏になると飲みたくなる。仕事おわりにビール一缶飲む時期もあった。あ、ビールじゃなくて発泡酒だけど。

 

一人だと一缶でお腹いっぱいになってしまうけど、友達との飲み会ではたくさん飲めてしまえるのが不思議だ。すぐトイレが近くなるので、飲んで出しての繰り返し。飲み会ではずっと生ビール、焼酎や日本酒は飲まなかった。居酒屋のセールで生ビール一杯100円のときは安いので5、6杯くらい飲んだ。飲み過ぎでお腹いっぱいになった。

 

今はすっかり飲まなくなってしまった。アルコールよりもただの水のほうがおいしい。体がスッキリとする。体がだるくならないのがいい。たまの週末にノンアルコールビールをちいさなコップで飲むくらい。それでも夏の冷えたビールにはそそられるものがある。