香りつき消しゴム

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ひさしぶりにフルーツ味の歯磨き粉を使った。

幼稚園のころを思い出す。懐かしい。いちご味を使っている子を見て「いいなあ」と思った記憶がある。スースーするからいミント味ではなく、甘いフルーツ味。私は使っていたのだろうか、すっかり記憶がない。小学生のころ「アクアフレッシュ」を使っていたのははっきりと覚えている。赤青白のストライプ、その模様をきれいに出すには必ずお尻から出さなくてならない(お尻ってどこだ)。途中から押してしまうとそこからストライプがグジャグジャになるので厳禁だ。

 

今使っているのはオーラツー「フレッシュキウイミント」。パッケージも洒落ているし、期間限定につられてしまった。基本はさっぱりしたミント味がいいが、たまにはいいだろう。味はたしかにキウイミント。 

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フルーツ味の歯磨き粉で思い出したけど、子供の頃ってなにかと「香り付き」が好きで、あれこれ欲しがった。

 

香り付きのポケットティッシュ。普通のサイズより小さい子供サイズ。小学生のとき流行っていて女の子はたいていもっていた。外見のデザインもファンシーだし、中のティッシュ本体にはイラストがプリントされているものもある。

アイスクリームの香り、ストロベリー・オレンジ・パインのフルーツの香り。おいしそうな香りで匂いをかいでいるだけで幸せ気分になってしまう。ティッシュ自体はそうそう使わなかった。実用のためではなく、手元に置いていい匂いを嗅ぐため。プリント柄もかわいくて、いろんな種類が欲しくて買っていた。

 

香り玉は女の子のなかで流行った。透明でカラフルな色の5ミリ位のつぶつぶで、ゴムみたいな弾力がある。ピンク、黄色、緑、青、紫と色も豊富で、それぞれに違う香りが付いている。あれはどうやって使うのだろう。友だちと見せ合いっこしていたっけ。筆箱の中に少し入れていくと特別な感じがした。ふわっとした香りと、ファンシーで可愛らしい見た目を楽しんでいた。教室には香り玉がぽつぽつと落ちていた。 

 

香りつき消しゴムは男女とわず人気だった。香りつき消しゴムには夢がある。ただの事務的な消しゴムならそんなことにはならない。色々なフルーツやコーラ、チョコレート、なんだかわからない甘い香り。色は淡いグリーンとかピンクのパステルカラーだし、すごくおいしそう。そういえば、本物そっくり「アーモンドチョコ消しゴム」をおじいちゃんが食べたというニュースがあったのを覚えている。チョコの匂いがして見た目はそっくり、さすがにかじった瞬間わかると思うけど。

 

香りつき消しゴムは1個50円だったか。何個か買って友だちと見せ合ったり、交換したりもした。クラスの悪ガキの男の子は、女の子の消しゴムを奪うということもあった。気の強い女の子なら被害はないけど、そうじゃない子は狙われる。

 

友だちの女の子が、消しゴムを買ってきたんだと見せてくれてた。それを私にもくれるという。パステルカラーで、透明なフィルムがかかっていて新しい。フィルムをやぶらなくても鼻を近づけると、ふわっと甘いいい香りがした。「どれがいいかな、どれもいいなあ」と淡い夢見心地で見ていたそのとき。悪ガキの男の子が近寄ってきて、その消しゴムを奪って逃げた。友だちは「もう、返して!」と言って追っかけたけど、返してもらえないのは目に見えていた。いつもそうだから。すごすごと戻ってきた友だちと、机に残された私はがっかりとした。「また買ってくるから」と友だちは言った。

 

次の日の朝。その友だちが教室に入ってくるなり「○○ちゃーん!買ってきたよー!」と、消しゴム3つほどつかんだ片手を高くあげ、満面の笑みで私の名前を読んだ。その瞬間、悪ガキの男の子が何人か群がり、あれよあれよと言う間に消しゴムはすべて強奪された。残されたのは、何もつかんでいないからっぽの手と、怒りと悲しみの入り混じった友だちの顔だった。 私はまたしてもがっかりした。

「買ってきたのをわざわざ見せないで、大声で言わなきゃいいのに……」と強く思ったのを覚えている。