半地下に住む、違法建築に住む

f:id:m-kite:20200323162445j:plain

映画「パラサイト 半地下の家族」を見た。半地下といえば思い出す。以前、都内の半地下のあるマンションに住んでいた。4階建てのマンションで私は4階に住んでいた。特殊なつくりで4階は一つの物件しかなく住んでいるのは私だけ。間取りは1LDKだった。

一人暮らしだからかなり広々で快適だった。リフォームしたばかりで、壁は白いペンキの味わいのある手塗りだった。塗りたてだったので入居したばかりの頃は少しペンキの匂いがした。本物の木のつやつやしたフローリングが一面に敷かれていた。家賃は予算より高くなってしまったが、一目で気に入ってしまったのだ。

屋上の違法建築に住む

その4階の物件は屋上に建てられた違法建築だった。私の前に住んでいた大家さんが建てたもので、もちろん違法建築だなんて知らされていなかった。管理会社も知らなかったようだ。401号室は住所にものっていなかった。水道料金の明細が来ないからおかしいと思って水道局に電話したら「401号室の住所が登録されていません」と言われ衝撃を受けた。調べたら一階のはじっこの物件、誰も入居していない107号室に401号室の水道メーターがあった。

401号室の電気のブレーカーは107号室にあった。事情を知らない管理会社の人が、物置になっている107号室のブレーカーを落としてしまったことが2度あった。夜遅く仕事から帰ってきた私は、電気もつかずシーンと静まり返っている暗闇の中で途方にくれた。管理会社の営業時間はとうに過ぎている。我慢しながら飛び上がるほど冷たいシャワーをじんじんと浴びた。苦情を言い、しばらくしてからブレーカーは無事に401号室内に備え付けられた。

家の外壁はトタンが貼ってある場所もある。外見だけ見れば、中もぼボロ家だと思うであろう。部屋の中も所々やや雑な仕上がりで手作り感があった。やはり大家さんの手作りだったのだろうか。リフォームはちゃんとした業者がやっていた。

細い水道管はむき出しで外を通っていたので、真冬の寒い時期に蛇口をひねっても水が出ないことが数回あった。凍ってしまったのだ。出勤前にこれは困ったが、そのまま蛇口を開きっぱなしにすれば、しばらくして水がちょろりちょろりと出てきて元に戻った。

春には桜、秋にはキンモクセイを愛でる

大家さんはおそらく犬を飼っていたようで、フローリングやドア、風呂場の床やシャワーなどに所々深い傷があり、ドアの隙間に茶色い犬の毛のようなものが挟まっていた。4階のみペット可となっていたから何か飼っていたのだろう。たぶん大きめの犬だと思う。

4階の家の外の周りには仕切りがあり、土が盛られ色んな植物が植えてあった。小さめの桜の木があり、春にはちゃんと桜を咲かせた。夜にはベランダに椅子を出し、夜桜を眺め風流な気分に浸った。ザクロの木には花が咲き、実を2、3個収穫することもできた。実を割ってみると、ルビーのような鮮やかで透明な小さな果肉の粒がたくさん詰まっていた。ほのかに甘酸っぱい味、生まれてはじめて食べた。秋になると、玄関前にあるキンモクセイからかぐわしい香りがふんわりと漂ってきた。キンモクセイの香りは今でも大好きだ。しかし植物の育て方にうとく何も世話をしなかったので、数年経ったら花も実もならなくなってしまった。

大雨で半地下が水浸し

4階の下の階はすべてワンルーム。一度見学したことがあるが、広さは6畳ほどのワンルームに小さなキッチン、収納は狭い。トイレバスは一緒でよくある一人暮らし用の間取りだった。

1階が半地下に位置している。一般の賃貸マンションになる前は、飲み屋だかパブみたいのが入っていたそうだ。なるほどそういうわけか。ある日の夜大雨が降り、その半地下は水浸しになった。どうやら私を大家さんと間違ったみたいで、その雨漏りの住人から「雨漏りがする」と夜にピンポンがきた。「私は大家さんではなく一般の人ですよ」と答えた。気の毒なので下に見にいったら、半地下の他の住民も外に出ていた。けっこうな雨漏りで部屋が水浸しになっていると。その後管理会社に連絡したようだが、その管理会社もいいかげんで、雨漏り問題はちゃんと取り合ってもらえず弁償もなかったらしい。ほどなく、その気の毒な住民は引っ越しした。雨漏り問題はそれまでで2回もあったようだ。それは嫌にもなるだろう。

次回へ続く。