歯がとれる

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新年あけましておめでとうございます。お正月はどうだったって?今年は実家に帰省せず、おとなしくこっちで年越しでした。大晦日だからといって0時まで起きていることはせず、いつも通りに寝た。おせち料理はとくに欲しなかったから買わなかったけど、お餅は好きだからこんがり焼いて醤油つけて海苔巻いて食べた。シンプルでおいしい。

 

年々、あまり正月ぽく感じなくなってきた。実家に帰省しなかったから雪も見ていない。それでもメリーチョコレートの福袋と、自家焙煎コーヒー店でとても高いコーヒー豆(100gで1447円!)を買ったら、豊かで楽しい気持ちになった。コーヒー豆の話はけっこうあるのでまた次回にでも。

 

晦日は近所をぶらぶら歩きながら隣駅まで歩いた。このぶらぶら歩きが気分転換にも健康にもよい。ランチは最近開店したステーキ屋にする。とくに肉好きではないけれど、分厚い肉の塊はたまに食べたくなるのだ。大晦日をステーキで締めくくる。これはこれでありな気がした。

 

価格は1000円ちょいほどでリーズナブル。せっかくなので肉は2種類の組合せにする。焼けて熱々の鉄板のうえに、レアの分厚い肉の塊がジュ〜ジュ〜と横たわっている。パチパチと細かい油がはねてくる。服にはねてはたまらないので紙のエプロンは必須。しかしこのジュ〜ジュ〜パチパチが躍動感に満ちあふれていてうれしい。さぁ、肉を食らうぞ。外は焼けている塊にすかさずナイフを入れると中はきれいな赤色。このまま食べてもいいけどもう少し焼きたいので、鉄板のうえで好みの焼き加減にする。まずはシンプルに岩塩、ガリっと挽いて一口。お店のオリジナルソースやガーリックソース、ガーリックマーガリン、ガーリックチップなどあるので、あれこれ試したくなる。で、あれこれ試し、肉をモグモグおいしく食らっていたら口の中で突然ガリっと。

 

……ん、まさか、これはいやな予感。おそるおそるその異物を出してみると、やっぱり自分の歯だった。右の奥の銀歯の詰め物がぼろっととれてしまった。もうー、ステーキ食べてる最中なのに。その後は左のほうだけで、ゆっくりとステーキを食べるためになってしまった。穴が空いた歯になにかはさまったら神経を刺激して激痛がはしるのではないか。ただならぬ不安と焦り。過去にあったのだ。横浜中華街で肉まんを食べていたら、穴が空いた歯にかたいタケノコが入りズキッと激痛!あの痛みを忘れることはない。

 

奥歯を失った私は、おばあちゃんのように急に食べるのがおそくなった。ただならぬ不安と焦り。いますぐにでも歯科に行きたい。しかしなんたることか、この日は大晦日、歯科は正月休みだ。奥歯を失ったまま正月を過ごせというのか。正月はたらふくご馳走を食べてというイメージがあるのに。しかしイメージだけで、実際は冒頭のようにおせちも食べず、とくにご馳走も食べなかった。こんな歯ではあまり食欲はわかなくなってしまった。かたいものは食べづらいし、万が一、穴に入って痛みがはしると思うとこわい。最近、カリントウと芋けんぴが好物になったというのに。しかしいいように考えてみれば、正月の食べすぎ防止になるんじゃないか。歯科がはじまる正月明けまで不便な歯ですごした。鏡を見てとれた銀歯をかぶせようとしたら「チクっ」と小さな痛みがあった。こわい。あわてて取り出す。もうここはそっとしておこう。

 

正月明け、朝一で歯科に電話し当日に予約がとれた。この歯科は腕が良く良心的で一回の診察でおわる。長引かせることはない。銀歯がとれると高確率で虫歯になっているそう。数年ぶりの歯科だったが虫歯にはなっていなかった。よかった。持参した銀歯を取り付けておわり。取り付けるときすこし痛みがあったがしばらくしたらおさまった。今ではすっかりふつうの生活に戻った。おばあちゃんから少し若返った。健康な歯を維持すること、食べすぎないようにすること、ゆっくりよくかんで食べること。基本的なことであまり意識していなかったことが身にしみた新年の幕開けだった。