めまい

ひどいめまいに襲われた。突然で、暴力的で、今までに経験したことのないめまいだった。はじまりは数ヶ月前の深夜、寝ている時におこった。時計を見ていないので何時かはわからない。あたりはひっそりと静まりかえり、遠くからの電車の音も聞こえない。部屋は暗いが、目が慣れればうっすらと部屋の中が見える。かなりの近眼なので、メガネをかけなければ何だかわからないけれど。体にかけた厚手の羽毛布団はふかふかとあたたかく、夢でも見ていたようなまどろみ気分。

そんなとき自然に右に寝返りをうった。そのとたん、ぐわんぐわんととんでもない速さで回転するめまいが襲ってきた。どのくらいの速さかというと、1秒間に5回は天井が回るくらいの高速回転。正確な回数はわからないけど、とんでもない速さで、気持ちが悪く、身も心も耐えられないほどの辛さだ。天と地がひっくり返る感覚でとても怖い。

ハッとして体を真っ直ぐに戻した。そうしたら治った。夢うつつに、今度は左に寝返りをうった。また同じめまいに襲われたので、すぐに真っ直ぐに戻した。

目覚まし時計の音で目がさめた。部屋の中はすっかり明るくなっている。新しい朝のはじまりだ。「昨夜のあれは何だったんだろう、夢だったのかな」起きようとして半身を起こそうとしたら、強烈なめまいに引き倒されて、起き上がれず布団にぶっ倒れた。

「うわっ、やっぱり夢ではなかった」。起きないわけにいかないから、そろりそろりとゆっくり様子を見ながら起き上がってみる。まためまいが起こるのではないかと恐怖心があったが、どうにか大丈夫だった。

調べてみるとこの症状は「回転性めまい」だった。耳の中にある耳石が剥がれ落ち、三半規管に入り、頭部を動かすときに刺激になるのが原因だという。めまいは中高年の女性に多いらしい。

回転性めまいを治すには、剥がれた耳石を元に戻すといいので、自己流でやってみることにした。テーブルの上に仰向けになり、頭の位置をやや下にし、ゆっくりと頭を回転させる。ある位置にさしかかると、また強烈なめまいが襲ってきて、とても耐えられないのでやめた。本当にこのめまいは恐怖だ。自己流は危険なので病院で治してもらったほうがいい。

しかしできることなら自分で治したい。患者の8割が改善した体操がある。寝たり起きたり、急に頭を動かすとめまいはおこる。なのでそれぞれの動きをゆっくりとやり、その状態をキープする。これを毎日やれば自然と治っていく。耳石を動かすとだんだん小さなかけらになるらしい。ゆっくりと動かすと「ふわっ」「くらっ」とする。毎日やっているとだんだんとよくなってきた。今では症状は消え、すっかり治ってしまった。

夜の「よこはまコスモワールド」を撮影

「よこはまコスモワールドのスーパープラネット」（強烈な引力と無重力のような体験ができる高速回転アトラクション）に以前乗ったことがあるが、今まで体験したことのない速い回転、気持ち悪くなりそうで、途中で「もうやめてほしい！」と切に願った。しかし時間は長くなかなか終わらない。

あの強烈な「回転性めまい」は忘れそうにない。今まで体験した遊園地のどのアトラクションよりも、強烈で速かったのだから。

９割のめまいは自分で治せる (中経の文庫)

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